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2011年10月 8日 (土)

スティーブ・ジョブズ・インタビュー 2003年12月

 10月5日、アップルの創業者のスティーブ・ジョブズさんが亡くなりました。享年56。
 Windwosマシン以外のパソコンを使ったことがなく、アップルの製品も数えるほどしか買ったことのない私のような人間でも、彼のことを慕い、尊敬するということはあってもよいと思います。アップル・コンピュータが設立されてから30数年、どれだけ恩恵を蒙っていることか。今ある各種のコンピュータの技術は彼の思想があってこそのものだと思います。

 私がスティーブ・ジョブズに「ぐぐぐ」と興味がわいたのは、彼がボブ・ディランの海賊盤のコレクターだったというのを何かの記事で知ったときでした。素敵な話ではないですか。
 しばらく出典が分からなかったその記事が、今回調べたら見つかりました。アメリカの雑誌『ローリング・ストーン』のインタビューでした。追悼の意味を込めて急遽その記事の一部を訳しました。iTunes Store の発表(2003年4月)後半年くらいの間になされたインタビューなので、音楽が話題の中心を占めています。全文の翻訳は時間が作れたらやってみます。

Steve Jobs Interview

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「スティーブ・ジョブズ ~ザ・ローリング・ストーン・インタビュー」
(『Rolling Stone』 2003年12月3日号収録 ・ 抜粋)


――アップルはいつからミュージシャンたちと契約を始めるおつもりですか? つまりレコード・レーベルを立ち上げるのはいつか、ということですが。

スティーブ: ミュージシャンと契約することは極めて簡単なことだよ。でも成功している若いミュージシャンと契約することは極めて難しい。それはレコード会社がみんなやっていることだからね。彼らの価値は5000人の中から一人の逸物を拾い上げるところにこそあるわけだが、我々はそれはしない。
 レコード業界に起こるであろう構造的な変革は相当なもののはずだ。アーティストたちと話をしてみると大変な数の人間がレコード会社を嫌っていることがよく分かった。私はその理由が知りたくなったんだ。彼らがレコード会社を好まない一番の理由は、彼らが十分に成功しているのにもかかわらずほんのわずかな金しか稼げないという点だ。

――搾取されていると感じるわけですね。

スティーブ: もちろんだ。ところがその音楽を作っている会社が今、どれだけの金を生み出している? 金なんかどこにもないじゃないか。あの金はどこに行っちまったんだ? まるきりの無能だったって言うのか? 誰か100ドル札の札束をスーツケースに詰め込んでアルゼンチンに持ち逃げでもしてしまったのか? 一体何が起こってるんだ?
 原因は多くの人間と話をしたあとで分かったよ。私の結論はこうだ。若いアーティストと契約を結ぶとその際にかなりの額の前払金が支払われる。100万ドル、あるいはそれ以上。レコード会社はアーティストが成功したときに、支払った前払金の埋め合わせをするという仕組みになっている。
 ただね。彼らがいかに新人発掘の能力に長けていたとしても、彼らが釣り上げる人間の中で成功するのは10人に1人か2人だ。だからほとんどのアーティストからは、払った金の回収は不可能だということになる。その金はみんな損だというわけだ。それじゃ敗者たちの分は誰が払うんだい?

――キッド・ロックでしょうか。

スティーブ: 勝者が払うのさ。勝者は敗者のために払い続ける。そのために成功に見合った報酬など見たことがない。彼らがあわてふためくのも無理もない。では処方箋はどこかにないのか? 解決方法は? 処方箋はある。それは前払金を払うことを止めることだ。売上高から勘定すること。そしてアーティストにはっきり言うことだ。「私たちはあなた方に、入ってきたお金の中から1ドルにつき20セント差し上げましょう。その代わり前払金はもうなしです」と。
 会計はおかげでシンプルになるだろう。利益から払うんじゃない。収入を元にして支払うんだ。とてもシンプルだよ。成功すればそれだけお金もたくさん入る。成功しなければ一銭もお金は入らない。我々はこのまま行くと、マーケティングに伴う費用のリスクも負っているわけだから早晩消えてしまうかもしれない。しかし、成功しなければ金もないし成功すればたくさん金が手に入るというこの考え。これこそが解決策だ。ほかの世界でもそうすればうまく行くはずだ。

――レコード業界もそういう方向で進むとお考えですか。

スティーブ: そうは言っていないよ。私はそれが処方箋だと思うと言ってるだけだ。患者が薬を飲むかどうかはまた別の問題さ。

――次にご自身の音楽の好みについてお尋ねしたいと思います。ボブ・ディランの大変なファンでいらっしゃいますよね。ディランはあなたにとって何を意味しますか?

スティーブ: ディランは非常に明晰な思想家であると共に詩人だった。彼は見た物、頭に浮かんだ物をそのまま書いたんだと思う。初期の作品はとりわけ緻密で正確だ。彼が大人になるにつれ、解きほぐさないと分からないようなところがちょっとずつ出てくるけどね。しかし一旦糸がほぐれれば、鐘が鳴るようにすべてが明らかになる。
 先日「しがない歩兵」(Only a Pawn in Their Game)を聴いてたんだ。メドガー・エヴァーズが撃たれたとき、そのことを歌ったフォークソングは山のように書かれたのだけれど、ディランは注意深く、考えに考え抜いてあのきらめくような歌を作った。あの作品は彼がペンをとった頃と比べても今でも同じくらいの輝きを保っている。

――いつディランを発見したのですか。

スティーブ: 私をディランに導いたのはスティーブ・ウォズニアックだ。私がたぶん・・・ああ、13か14のときだったと思う。ふたりは最後には世界中のあらゆる海賊盤のテープを持っている男と出会った。ボブ・ディランの会報紙の発行までしている男だったね。本当に入れ込んでいたな。彼の人生すべてがボブ・ディランに関するものだった。しかし彼の持っているブートレグ(海賊盤)は最高だった。今日手に入るリリースされたどの作品よりも素晴らしかった。驚くべき代物だ。それゆえ私たちふたりの部屋はコピーしたボブ・ディランのテープで溢れ返っていたよ。

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 インタビュー記事の全文は、2011年10月現在PDFファイルで読むことができます。



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